関節リウマチで障害年金を受給するために押さえておくべきポイントを徹底解説
関節リウマチは、進行すると痛みが強くなったり症状が全身に広がったりする病気です。場合によっては、日常生活を送るうえでさまざまな不便が生じたり、就労できなくなったりするため、経済的な不安を抱えてしまいかねません。
このように関節リウマチの症状に悩まれている方が利用できる可能性のある制度として、障害年金があります。一度支給が決まると継続的に経済支援を受けられるため、症状の進行に伴う、生活の不安を緩和できるかもしれません。
本記事では、関節リウマチで障害年金を受給する際に押さえておくポイントを解説します。
受給要件や申請の際の注意点などをまとめていますので、ぜひご参考にしてください。
1.関節リウマチとはどんな病気?
関節リウマチとは全身性の慢性滑膜炎で、原因はいまだに明らかにされていない疾病の一つです。
初期には手足の指などにこわばりや変形などの症状がみられますが、進行すると全身の大きな関節に変形が見られたり、痛みを伴ったりします。薬物療法の進歩によって、ある程度進行を抑制できる病気ですが、進行を完全に止められるわけではないため、将来にわたって治療にかかる費用・時間などさまざまな不安が生じるかもしれません。
こうした場合であっても障害年金を受給できれば、不安の軽減につながり得るのです。
ただし障害年金を受給するには満たすべき受給要件があり、誰でも関節リウマチを患えば受給できるわけではありません。そのため障害年金制度に理解を深め、自分が障害年金を受給できる状況なのか見極めることがとても大切なのです。
2.障害年金とは?
障害年金は原則、公的年金に加入している人が病気やケガを原因として、障害により生活に不便が出たり、仕事に制限を受けたりするときに支給される可能性のある年金です。前述したように関節リウマチが発症した場合にも、基準を満たせば障害年金を受給できる可能性があります。
2-1.障害年金の種類
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、初診日に加入している公的年金の種類によって支給される年金が異なります。
障害基礎年金は、初診日に原則国民年金に加入している方がもらえる障害年金です。
自営業者やフリーランス、無職の方などが支給対象者になります。また第3号被保険者である専業主婦や、20歳前に傷病を負った方も障害基礎年金の支給対象者です。
一方、障害厚生年金は初診日に厚生年金に加入している方を、支給対象とした年金です。障害厚生年金は障害基礎年金に比べて支給対象となる障害の範囲が広く、比較的軽度の障害であっても支給される可能性があります。
なお、障害年金の受給額や請求方法の種類など詳細な情報を知りたい場合には、以下の記事をご覧ください。
「障害年金とは?受給要件や金額、申請方法の種類について徹底解説」の記事はこちら
3.障害年金における3つの受給要件
受給要件は障害の種類を問わず、障害年金を受給するために満たす必要がある条件を指します。障害年金の受給要件は以下の3種類です。
これらの受給要件について詳しい内容を解説します。
初診日要件
初診日とは障害の原因になった傷病で、初めて医師等の診察を受けた日のことです。
関節リウマチの初期症状として関節痛が生じたときに、病院へいくより先に接骨院の施術を受ける場合があるかと思います。しかし原則として、接骨院を訪れた日は初診日とは認められません。関節リウマチで請求する場合、あくまで初めて病院を受診した日が初診日に該当するため注意すべきです。
障害年金を受け取るためには「初診日に原則公的年金に加入している」必要があります。もし公的年金に加入していなかった場合、障害年金を受給できません。
ただし20歳未満の方と60歳以上65歳未満で日本国内に在住されている方は、そもそも公的年金の加入義務がありません。初診日に公的年金制度に加入していなくとも、障害年金を支給される場合があります。
保険料納付要件
保険料納付要件は、障害年金を受給するための保険料納付状況の基準です。具体的な内容を以下に示します。
- 初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの期間において、3分の2以上保険料を納付または免除されていること。
- 初診日が令和8年4月1日前にある場合については、初診日において65歳未満であり、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの一年間に保険料の未納がないこと。
上記のうち、いずれかを満たす必要があります。原則として障害年金を受給するためには、初診日の前日時点で保険料納付要件の基準以上に、年金保険料を納めていることが必須です。
障害状態該当要件
障害年金を受給するためには、障害の状態が障害状態該当要件を満たす程度である必要があります。
具体的には障害の状態が障害等級に該当するかどうかが、障害年金の受給可否における決め手です。障害等級は1〜3級まで存在しており、1級が障害の重い状態、3級が軽度の状態をそれぞれ示します。
また障害等級3級に該当しないほど軽度の障害でも、障害手当金の支給対象となるケースがあります。障害手当金は年金ではありません。一時金としてまとまった金額が支給される制度です。
注意点として障害基礎年金の受給対象者は、障害等級2級以上でなければ障害年金を受給できません。障害等級3級や障害手当金に該当する場合は、障害厚生年金の受給対象者のみ支給されます。
4.関節リウマチの場合、障害認定基準はどれを確認すべき?
障害認定基準とは、どの程度の障害であれば障害等級に該当するかについて定めたものです。障害認定基準は障害の種類ごとに設けられています。
例えば眼の障害であれば「眼の障害認定基準」、精神疾患による障害であれば「精神の障害認定基準」といった具合です。
関節リウマチのように肢体の障害については「上肢の障害」「下肢の障害」「体幹・脊柱の機能の障害」及び「肢体の機能の障害」の4種類に区分されます。
関節リウマチの症状は上下肢の広範囲にわたる場合が多いため、4種類の肢体の障害のうち「肢体の機能の障害」に該当するケースが一般的です。そのため本記事でも「肢体の機能の障害」の障害認定基準を紹介します。
なお、関節リウマチの症状が下肢のみに出ている場合は「下肢の障害」の障害年金基準を基に判定される場合がありますのでご注意ください。
下肢の障害認定基準はコチラ
5.肢体の機能の障害認定基準
肢体の機能の障害認定基準は以下のとおりです。
令別表 | 障害等級 | 障害の状態 |
国 年 令 別 表 | 1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの | |
厚 年 令 別表第1 | 3級 | 身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
上記の表は肢体の機能の障害における、障害等級判定の際の大元となる考え方です。
5-1.肢体の機能の障害「認定要領」
認定基準を補足するための事項を定めた「認定要領」を確認すれば、より詳細な障害等級判定の考え方を理解できます。
認定要領によれば、各障害等級に該当する肢体の障害の状態は以下のように明記されています。
障害等級 | 障害の状態 |
1級 |
|
2級 |
|
3級 | 一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの |
上の表の表現を補足する内容として、認定要領に以下のような解説が掲載されています。
ア. 「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいう。
イ. 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。
ウ. 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。
ただし上の表の内容のみで、等級判定されるわけではありません。
関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性と日常生活における動作の状態をもとにして、身体機能を総合的に認定されます。
以下のように、日常生活における動作の具体的な評価ポイントが、身体機能の種類ごとに例示されています。
手指の機能
(ア)つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
(イ)握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
(ウ)タオルを絞る(水をきれる程度)
(エ)ひもを結ぶ
上肢の機能
(ア)さじで食事をする
(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ)用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
(エ)用便の処置をする(尻のところに手をやる)
(オ)上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
下肢の機能
(ア)片足で立つ
(イ) 歩く(屋内)
(ウ) 歩く(屋外)
(エ)立ち上がる
(オ) 階段を上る
(カ)階段を下りる
上記の項目の評価欄は、肢体の障害の診断書に設けられており、担当のお医者さんが4段階評価で記載します。
これらの評価は障害等級の判定に影響を及ぼすことから、診断書を作成してもらうお医者さんには、日常生活の状況をしっかり伝えていかねばなりません。
6.関節リウマチで障害年金を請求する際の注意点
関節リウマチで障害年金を請求する際に注意すべき点を解説します。
6-1.初診日は関節リウマチで初めて医師等を受診した日
障害の原因になった傷病で初めて医師等の診察を受けた日を、初診日と呼びます。
医師等とは具体的には、医師と歯科医師の二者です。一方で整骨院や接骨院、鍼灸院での施術は、医師等の診療にはあたらず初診日として認められません。
関節リウマチの初期症状として関節痛が現れたときに、病院を受診するより先に接骨院で施術を受ける場合があるかと思います。この場合、接骨院で施術を受けた日は初診日とは認められず、あくまで関節リウマチで初めて病院を受診した日が初診日です。
初診日を正しく特定することは、障害年金を受給するうえで、最も重要な要素です。
たとえば受給要件の一つに「初診日に原則公的年金に加入している」ことが挙げられます。しかし、そもそも初診日を正しく特定できていなければ、受給要件を満たしているかも判断できないわけです。
申請した初診日が正しくないことが後々判明した場合には、障害年金の不支給につながりかねないためご注意ください。
なお初診日の考え方やルールについては、以下の記事で解説しています。
「障害年金とは?受給要件や金額、申請方法の種類について徹底解説」の記事はこちら
初診日について正しく理解したい場合には、併せてご覧ください。
6-2.お医者さんと積極的にコミュニケーションを取る
障害年金の請求者が、積極的にお医者さんとコミュニケーションを図る点は、障害年金を受給するためのポイントの一つです。
請求書類の中でも重要な位置付けにある診断書には、お医者さんの客観的な目線で日常生活動作の状況について、適切に反映してもらわねばなりません。
しかしお医者さんが日常生活の様子を全て把握することはなかなか難しいものです。そのためお医者さんと積極的にコミュニケーションを取り、実態を共有する必要があります。
このことにより、お医者さんは日常生活の状況をつかんだうえで、実態と整合性の取れた評価ができるようになるのです。
6-3.診断書の内容は必ずチェックする
お医者さんに作成してもらった診断書の内容は、必ずご自身またはご家族が確認しましょう。先に述べた通り、お医者さんは必ずしも実態の全てを把握して、診断書を作成しているわけではないためです。
もし実態より軽く評価されていると、受給できる年金が少なくなってしまったり、不支給になってしまったりする場合があります。特に「日常生活における動作の障害の程度の欄」の記載内容については、自身で確認しておくべきです。
日常生活における動作の障害の程度の欄は、上のように4段階評価(「◯」「◯△」「△×」「×」)で評価を受けることになります。
評価は杖や補助用具を使用しない状態でなされるべきです。しかし、補助用具を使用した状態の評価が記載されている場合もあるためチェックしましょう。
また動作が出来る場合にしても「時間はかかっていないか」「毎回できるか」「自分で工夫をして行っていないか」なども評価の際に考慮されるべきです。これらを加味したうえで、評価がなされているのかについても、チェックしておくとよいでしょう。
そして、診断書の評価と実態に差があると感じる場合には、もう一度お医者さんのもとを訪れ、相談すべきです。
7.障害年金の申請手続きの流れ
障害年金の申請手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。
STEP1.年金事務所で初回年金相談を受ける
STEP2.医師に診断書の作成を依頼する
STEP3.病歴・就労状況等証明書を作成する
障害年金の手続きにおける詳しい進め方について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
「障害年金申請手続きの6つのステップを解説!請求の流れをつかめる」の記事はこちら
8.まとめ
この記事では、関節リウマチで障害年金を受給する際の受給要件や、申請を行う場合の注意点について解説しました。
関節リウマチの症状が進行すると、日常生活に不便が出たり就労できなくなったりするリスクがあります。しかし、障害年金を受給できれば経済的な支えが得られるため、安心して治療に専念できるのです。
ただし障害年金を受給するには、以下の3つの受給要件を満たす必要があります。
- 初診日要件
- 保険料納付要件
- 障害状態該当要件
このうち障害状態該当要件を満たしているかは、お医者さんによって作成される診断書の内容を基に判断されます。しかし、診断書の評価は実態より軽く書かれているケースもあるため、そのまま提出すると本来の受給額より少なくなってしまったり、不支給になったりしかねません。そのため、事前にお医者さんと積極的にコミュニケーションを取って、日常生活の実態を共有したり、診断書が適切な内容になっているか確認したりする必要があるのです。
しかし、リウマチでつらい症状を抱えるなか、さまざまな点に注意しながら申請準備を行うのは大変ですよね。疑問点や不安な点もいろいろ生じることでしょう。こうした場合に障害年金の専門家である社会保険労務士に相談すれば、適切なアドバイスやサポートを受けられます。
当センターでは、初回無料で障害年金にまつわるご相談を承っております。
専門のスタッフが、あなたの疑問や悩みにお答えいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
当センターでの受給事例
当センターに障害年金申請代行のご依頼をいただき、障害年金受給に結びついた事例をご紹介いたします。症状や生活の状況などを、ぜひ参考にしてください。
事例. 関節リウマチ(40代女性)
年金の種類 |
障害基礎年金2級 |
請求方法 |
事後重症請求 |
年金額 |
年間約155万円 |
女性は10代の頃から腎疾患を患い病院を受診していた中で、血液検査の際に関節リウマチを発症していることが分かり治療を開始しました。
数か所の病院で専門的な治療を行い、服薬を継続することで当初は仕事と子育てを両立しながら生活を送れていました。しかし、関節の痛みや腫れ、手足の変形などが徐々に進行していき、生物製剤点滴を使って治療しなければならなくなっていきます。
約2年前からは全身状態が悪化し、終日関節痛と疲労感に悩まされるようになり、車椅子生活になっています。現在は仕事も辞めざるを得なくなり、子育てもままならない状況で、日々、旦那様の助けを借りながらなんとか生活している状況です。