障害年金受給のデメリットとメリットをわかりやすく解説!

障害年金は公的年金に加入している人が、病気やケガを原因として一定の障害状態になったときに支給される年金です。便利な制度ではありますが、受給にあたっては何かデメリットはないか心配になるかもしれません。
結論、障害年金にはいくつかデメリットと呼べる面があるものの、総じてメリットの方が大きい制度です。
この記事を読めば障害年金の受給におけるデメリットとメリットの両面をつかめます。
なおこの記事は障害年金の制度について、ある程度理解している方向けの内容です。障害年金の制度について概要を知りたい方は、先にこちらの記事をご覧ください。
1.障害年金を受給する3つのデメリット

障害年金を受給する3つのデメリットは以下のとおりです。
- 他の制度の支給額が調整される場合がある
- 扶養から外れる場合がある
- 死亡一時金・寡婦年金がもらえなくなる
1-1.他の制度の支給額が調整される場合がある
障害年金との兼ね合いで、他の制度の支給金額が調整される場合があります。具体的には以下の制度において、支給額が調整されます。
- 生活保護費
- 傷病手当金
- 労災給付
- 児童扶養手当
ただし、いずれの制度においても調整後に収入が減ってしまうことはありません。障害年金と合算して同額、制度によっては少し多くなるように調整されます。それぞれの制度ごとに簡単に調整の仕組みを解説します。
1-1-1.生活保護費
生活保護費と障害年金は併給できます。しかし、いずれの制度からも満額支給されるのではなく、生活保護費は調整されて支給されるため、トータルの受給額は変わりません。
生活保護と障害年金の関係性について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「生活保護と障害年金の併給について徹底解説!」の記事はこちら
こちらをお読みいただきますと、障害年金と生活保護を併給する際の変化や注意点について理解できます。
1-1-2.傷病手当金
傷病手当金は、健康保険の被保険者がケガや病気を理由に会社を休んだ際に支給されます。
同じ病気やケガで障害厚生年金と傷病手当金、両方の受給資格がある場合には傷病手当金はもらえなくなります。
しかし以下の場合には、傷病手当金は調整されることなく受け取れます。
- 障害厚生年金と傷病手当金において、支給の理由になるケガや病気が異なる
- 障害基礎年金のみを受給している
また「障害年金の総支給額(障害基礎年金+障害厚生年金)÷ 360日」よりも「傷病手当金の日額」が高額な場合、差額分を傷病手当金として受け取れます。
1-1-3.労災給付
労災給付は業務災害や通勤災害など、業務上の病気やケガによる休業に対して支給されます。障害年金を受給する場合にも労災給付は併給できますが、73〜88%の割合で、減額調整されて支給されます。
労災保険支給率表
社会保険\労災保険 | 障害(補償)年金 | 傷病(補償)年金 | 休業(補償)給付 |
障害厚生年金 (1級、2級) |
73% | 73% | 73% |
障害厚生年金 (3級) |
83% | 88% | 88% |
障害基礎年金 (1級、2級) |
88% | 88% | 88% |
労災給付のみを受給する場合と比較して、障害年金と調整後の労災給付の総額の方が多くなるように受け取れます。そのため労災給付と障害年金の併給によって損をすることはありません。なお、20歳前障害による障害基礎年金と障害手当金については、労災保険の給付が優先支給となります。
1-1-4.児童扶養手当
児童扶養手当は、ひとり親家庭や、父または母に重度の障害がある家庭を対象に支給される手当です。
子どもの年齢が18歳に達する日以降の最初の3月31日までにあること(高校卒業まで)、または20歳未満で一定程度以上の障害があることが要件となります。
障害年金1・2級を受給する場合、児童扶養手当の額が障害年金の子の加算部分の額を上回る場合には、その差額が児童扶養手当として支給されます。
障害厚生年金3級を受給する場合に、児童扶養手当より障害厚生年金の総支給額の方が大きい場合は、児童扶養手当は支給されません。一方、児童扶養手当より障害厚生年金の総支給額の方が小さい場合には、その差額が児童扶養手当として支給されます。
1-2.扶養から外れるケースがある
障害年金を受給していて年収の合計が180万円を超える場合、健康保険上で家族の扶養から外れることになります。
扶養から外れると、自身で国民健康保険に加入する必要があります。つまり免除されていた保険料の支払いが生じるということです。
収入が障害年金のみという方で、年収180万円を超えるケースはさほど多くありません。しかし、障害年金を受給しながら就労して給与収入も得ている方は「180万円の壁」に注意が必要です。
1-3.死亡一時金・寡婦年金は支給されなくなる
生計同一や生計維持の関係にあった故人が生前、障害基礎年金の支給を受けていた場合には、その遺族は死亡一時金や寡婦年金をもらえなくなります。
本来、死亡一時金とは何ら保険給付を受けることなく死亡した方の保険料が、掛け捨てとならないように一定の遺族に一時金が支給される制度です。一方の寡婦年金は、残された妻の生活保障を目的とした制度です。
死亡一時金と寡婦年金では支給対象となる遺族の範囲が異なるため、それぞれ紹介します。
寡婦年金の対象となる遺族
生計を同じくしていた遺族(1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)
死亡一時金の対象となる遺族
その夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻
これらについては生計同一や生計維持の関係にあった故人が生前、障害基礎年金の支給を受けていた場合には、その遺族は死亡一時金、寡婦年金はいずれも支給されません。
死亡一時金・寡婦年金について詳しく知りたい方は、以下のリンクよりご確認ください。
日本年金機構ホームページ「死亡一時金」
日本年金機構ホームページ「寡婦年金」
2.障害年金を受給する5つのメリット

障害年金を受給する5つのメリットは以下のとおりです。
- 経済的にサポートしてくれる
- 税金がかからない
- 使い道が限定されない
- 働きながらでも受け取れる
- 法定免除が受けられる
2-1.経済的に生活をサポートしてくれる
障害年金は、障害を理由とした経済的な不安を抱える方のサポートに役立ちます。
たとえば障害により働けなくなったり、仕事に制限を受けたりして収入が減少してしまえば、生活を営むのが困難になります。
この場合に障害年金を受給すれば、家計を安定させたうえで傷病の治療に専念することができます。
2-2.税金がかからない
障害年金は非課税所得に分類されるため、税金を支払う必要がない点は大きなメリットとなります。
一方で老齢年金は課税所得のため、年金で得た収入に応じて税金を納める必要があります。
障害年金と老齢年金のいずれも受給要件を満たしている場合においては、税金額を考慮しながら手取り額の多い年金を選択する必要があります。
2-3.使い道が限定されない
障害年金は使い道を限定されることはありません。
一方で生活保護を受給する際には、所有できる資産に制限を受けます。たとえば住宅や自動車の購入に生活保護費を充てることは原則できないことになっています。
2-4.働きながらでも受け取れる
障害年金は働きながらでも受け取れます。そのため社会復帰の可能性を模索しながら、同時に経済的な困窮を防げる役割があるのです。
ただしどのような働き方でも障害年金が受給できるわけではありません。就労実態が障害年金申請における審査結果を左右するケースもあります。
障害年金を申請したものの不支給になったり、更新の際に年金が打ち切られたりする可能性もあるということです。
もし働きながら障害年金の受給を検討されているならば、ぜひ以下の記事をご覧ください。
働きながらでも障害年金はもらえる?
こちらをお読みいただきますと、働きながら障害年金を申請する際の注意点を押さえられます。
2-5.法定免除が受けられる
障害年金の1級または2級を受給している際には、法定免除を受けられます。法定免除を受けると障害年金受給中の国民年金保険料の納付が全額免除されます。
ただし法定免除については、メリットとデメリットが表裏一体になっています。
納付済み期間として老齢基礎年金の金額に反映されるのは、法定免除を受けた期間のうち、2分の1のみだからです。そのため年金保険料を納付した場合と比較して、将来的には老齢基礎年金の額が少なくなってしまいます。
法定免除は届出をしてはじめて適用される制度です。
法定免除を受けて「現在」の負担を軽減するか、法定免除を受けずに国民年金保険料を納付して「老後」に備えるかは、受給者自身で選択できます。
3.まとめ
この記事で解説した障害年金を受給する際のデメリットとメリットは以下のとおりです。
障害年金のデメリット
- 生活保護費・傷病手当金・労災給付・児童扶養手当の支給額が調整される
- 年収が180万円を超えると、家族の扶養から抜ける
- 死亡一時金・寡婦年金は支給されなくなる
障害年金を受けるメリット
- 経済的な不安を解消して治療に専念できる
- 非課税の収入が得られる
- 生活保護費と違って使い道は限定されない
- 働きながらでも受給できる
- 法定免除を利用して、期間中の国民年金保険料の納付が全額免除される
障害年金は受給するメリットがデメリットを遥かに上回っています。デメリットを懸念して障害年金を利用するかどうか悩んでいる方は、迷わず申請されることをおすすめいたします。