糖尿病での障害年金申請は初診日に注意!?受給要件を詳しく解説

糖尿病が重症化した場合に、就労や日常生活に支障をきたすこともあります。病気を原因として経済的に困窮してしまうと不安は募りますよね。こうした場合に障害年金を受給して、生活を安定させられる可能性があります。
この記事では、糖尿病における障害年金の受給要件や申請の際の注意点について紹介しています。
1.障害年金の概要

障害年金は公的年金に加入している人が、病気やケガを原因として障害により働けなくなったり、仕事に制限を受けるようなときに支給される年金です。糖尿病をはじめとした代謝疾患についても受給要件を満たせば、障害年金の支給対象となります。
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、初診日に加入していた公的年金の種類によって支給される年金が異なります。
障害基礎年金は、初診日に原則国民年金に加入している方がもらえる年金のことです。
自営業者やフリーランス、無職の方などが対象になります。また第3号被保険者である専業主婦や、20歳前に傷病を負った方も障害基礎年金の支給対象に該当します。
一方、障害厚生年金は初診日に厚生年金に加入している方を支給対象とした年金です。
障害厚生年金は障害基礎年金に比べて支給対象となる障害の範囲が広く、障害等級3級でも支給されます。
糖尿病の場合は障害等級3級に認定されるケースも多く、この場合は障害厚生年金の支給対象になっている方でなければ年金の支給には至りません。
2.障害年金の受給要件
障害年金の受給要件は障害の種類や重さを問わず、障害年金を受給するために満たされていることが必要です。受給要件には以下の項目があります。
- 初診日に原則公的年金に加入していること
- 初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの期間において、3分の2以上保険料を納付または免除されていること。または初診日が令和8年4月1日前にある場合については、初診日において65歳未満であり、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの一年間に保険料の未納がないこと。
- 障害認定日に障害年金を受給できる障害の程度(障害等級)に該当すること
なお20歳未満の方と60歳以上65歳未満で日本国内に在住されている方は、公的年金の加入義務がありません(厚生年金被保険者である場合を除く) 。よって初診日に年金制度に加入していなくとも、障害年金が支給される場合があります。
3.糖尿病の障害認定基準

代謝疾患である糖尿病の認定基準については、日本年金機構ホームページの障害認定基準分割版第15節「代謝疾患による障害」に掲載されております。
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|---|
国年令別表 | 1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状 が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生 活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状 が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生 活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を 加えることを必要とする程度のもの | |
厚年令 別表第1 | 3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を 加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
糖尿病による障害の程度はこの認定基準の目安の他、合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状態、 治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定されます。
4.必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難な方の認定基準
H28年6月に代謝疾患による障害について障害認定基準が一部改正され、必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難な方の認定基準が変わりました。
具体的には下記3つの要件を満たす場合、原則障害等級3級に認定されます。
- 1.検査前に90日以上継続してインスリン治療を行っていること
- 2.次のいずれかに該当すること
- (1)内因性のインスリン分泌※2が枯渇している状態で、 空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満を示すもの
- (2)意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が 平均して月1回以上あるもの
- (3)インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは 高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもの
- 3.一般状態区分表のうち(イ)又は(ウ)に該当すること。
一般状態区分表
区分 | 一般状態 |
---|---|
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、 活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
以上の条件を満たせば、原則障害等級3級に認定されます。ただし、障害基礎年金については障害等級3級における年金支給はありません。障害厚生年金を受け取れる方のみ支給対象となります。
5.合併症のある糖尿病の認定基準
糖尿病はさまざまな合併症を引き起こす病気です。糖尿病と合併症に相当因果関係がある場合、障害認定基準では同一の傷病として取り扱われます。相当因果関係とは前の疾病がなければ後の疾病は発症しなかったであろうという関係性を指します。
医学的に因果関係があるとされる合併症についても、障害年金の認定基準では相当因果関係があると必ずしも認められるわけではない点に注意が必要です。
糖尿病の主な合併症と相当因果関係の有無については下の表にまとめております。
糖尿病と相当因果関係あり | 糖尿病と相当因果関係なし |
---|---|
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たとえば脳出血と糖尿病は医学的には因果関係がありますが、障害年金の認定基準においては相当因果関係なしと判断されます。
5-1.合併症の種類と認定基準
合併症の種類によって症状が出る体の部位が異なるため、使用する診断書も異なります。例えば糖尿病性網膜症ならば眼に症状が出るため、眼の障害用の診断書をそろえる必要があります。併せて適用となる認定基準も異なるため注意が必要です。
合併症の種類と適用になる認定基準を以下にまとめています。
合併症の種類 | 認定基準 |
---|---|
糖尿病性網膜症の合併 | 第1節 眼の障害 |
糖尿病性壊疽の合併による運動障害 | 第7節 肢体の障害 |
糖尿病性神経障害による激痛、著明な知覚の障害、重度の自律神経障害等があるもの | 第9節 神経系等の障害 |
糖尿病性腎症の合併 | 第12節 腎疾患による障害 |
合併症で申請することにより、上位の障害等級(1級または2級)で認定を受けられる可能性があります。例えば糖尿病性腎症の合併のある方で人工透析をしている場合には原則障害等級2級に認定されます。しかし、必ずしも上位の障害等級で受給できるわけではありません。
どのように申請すべきかどうかは、個々の状況に応じて専門的に判断する必要があるため、自分がどのように申請すべきか悩まれている方は当センターへご相談ください。
6.糖尿病の申請においては初診日に注意が必要

障害年金の申請において最も重要になるのは初診日の特定にあります。正しく初診日を特定できない限り、障害年金の受給に結びつけることはできません。
通常、初めて受診した医療機関に保管されているカルテを基に、初診の医療機関で受診状況等証明書と呼ばれる初診日を証明する書類を作成してもらえます。
しかし糖尿病は、初診日から受給要件に該当する状態になるまで時間がかかる場合も多くあります。たとえば合併症で申請する場合、初診日は合併症の初診日ではなく、原因となった糖尿病の初診日を特定する必要があります。
そのため初診の医療機関が廃業になっていたり、カルテが廃棄されてしまっていたりといった事由により初診日が特定できず、障害年金の申請を諦めてしまうケースが多くあります。
こうした場合でも糖尿病手帳やレセプトなど手がかりになる情報を洗い出しながら、初診日の特定に至る場合もありますが、一般の方が自力で調査するのは難しい面もあります。
7.糖尿病の障害年金申請で悩む方へ
糖尿病で障害年金を受給したいけれど、手続きのハードルが高く申請を諦めかけているといった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
たしかに初めて受診した日から長い年月が経っていると、障害年金の申請が難しくなる場合があるのは事実です。しかし、初診日を特定するための手立てを残したまま諦めてしまっている方も少なくありません。
障害年金受給の可能性を広げるため、社労士に障害年金申請の代行を依頼する手段があります。
社労士は年金制度のスペシャリストです。糖尿病における障害年金申請は、初診日の特定に専門知識が必要となる場合があります。社労士に申請手続きを任せることで、負担を軽減しつつ、年金受給に結びつける可能性を高められるのです。
自分が障害年金を受けられる状況にあるか知りたい方は、まず当センターの無料相談をご利用ください。
8.まとめ
この記事では、糖尿病で障害年金を申請する際の認定基準や注意点について紹介しました。
糖尿病の障害等級認定は、代謝疾患の認定要領に基づき総合的に判断されます。必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難な方については、要件を満たせば障害等級3級の認定を受けることができます。
合併症のある場合は、合併症で申請することにより、上位の障害等級(1級または2級)で認定を受けられる場合があります。
また糖尿病は発症してから、障害年金の受給要件に該当するまでに長い期間経過することもあるため、初診日の特定が難しくなるケースがあります。カルテの廃棄や初診の病院の廃業などで初診日の特定が難しく、申請を諦めているという方は社労士への相談を検討してみましょう。