障害年金と障害者手帳の違いを徹底解説!それぞれの制度をわかりやすく紹介

障害年金と障害者手帳は、いずれも障害によって日常生活に支障が出る場合に、経済的な面でサポートを受けられる制度です。
障害年金と障害者手帳は全く別の制度なのですが、障害等級といった類似する概念も含まれるため、混同されがちです。実際にこれらの制度を活用していく場合には、2つの制度の違いを整理しておくことをおすすめします。
この記事を最後までお読みいただきますと、障害者手帳と障害年金の違いや、それぞれの制度の特徴などをしっかりつかめます。
目次
2 障害年金とは?
3 障害者手帳とは?
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3-1 障害者手帳には3つの種類がある
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3-1-1 身体障害者手帳
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3-1-2 精神障害者保健福祉手帳
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3-1-3 療育手帳
5 まとめ
1. 障害年金と障害者手帳は全く違う制度

障害者手帳と障害年金は全く別の制度です。まず運用機関や、根拠となる法律が異なります。
制度名 | 運用機関 | 根拠となる法律 |
---|---|---|
障害年金 | 日本年金機構 | 国民年金法・厚生年金保険法 |
障害者手帳 | 地方公共団体 | 身体障害者福祉法 |
上記のような違いがあるため、申請先や制度を利用する際に満たすべき条件も異なるわけです。
サポート内容も異なります。
障害年金はその名の通り、年金を受給できます。一方で、障害者手帳は税金の軽減措置が受けられたり、公共交通機関の料金が割引されたりといった優遇措置を複数受けられます。
このように障害年金と障害者手帳は、全く別物なのです。
2. 障害年金とは?
障害年金は原則公的年金に加入している人が病気やケガを原因として、障害により働けなくなったり、仕事に制限を受けるようなときに支給される年金です。
障害年金を受給できれば経済的な援助が受けられるため、障害を抱えてしまった際にも、生活の安心感が大きく向上します。
2-1. 障害年金の種類
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、初診日に加入している公的年金の種類によって支給される年金が異なります。
障害基礎年金は、初診日に原則国民年金に加入している方がもらえる年金です。
自営業者やフリーランス、無職の方などが対象です。また第3号被保険者である専業主婦や、20歳前に傷病を負った方も障害基礎年金の支給対象に該当します。
一方、障害厚生年金は初診日に厚生年金に加入している方を、支給対象とした年金です。障害厚生年金は障害基礎年金に比べて支給対象となる障害の範囲が広く、軽度の障害であっても支給される可能性があります。
2-2. 障害年金の受給要件
障害年金の受給要件は障害の種類や重さを問わず、障害年金を受給するために満たす必要があります。
受給要件には以下の項目があります。
- 初診日に原則公的年金に加入していること(初診日要件)
- 初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの期間において、3分の2以上保険料を納付または免除されていること。または初診日が令和8年4月1日前にある場合については、初診日において65歳未満であり、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの一年間に保険料の未納がないこと。(保険料納付要件)
- 障害認定日に障害年金を受給できる障害の程度(障害等級)に該当すること(障害状態該当要件)
なお20歳未満の方と60歳以上65歳未満で日本国内に在住されている方は、公的年金の加入義務がありません。初診日に年金制度に加入していなくとも、障害年金が支給される場合があります。
このように障害年金を受給するためには、原則初診日に公的年金に加入している状態にあり、保険料を基準どおりに納めている必要があります。
2-3. 障害年金の認定基準
障害年金を受給するためには、障害の重さが障害等級に該当する程度でなくてはなりません。障害等級には1〜3級まで存在しており、1級が障害の最も重い状態を示します。
ここで押さえておくべきポイントは、障害者手帳の「障害等級」とは別物である点です。障害者手帳の1級に認定されているからといって、障害年金の1級に該当するとは限りません。
障害者手帳よりも、障害年金の方が障害等級の認定基準が複雑な傾向にあります。
障害年金の障害等級1〜3級のおおよその目安となる例示は、以下の通りです。
令別表 | 障害の認定 | 障害の状態 |
---|---|---|
国年令別表 | 1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの | |
厚年令別表第1 | 3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
あくまで上記の認定基準は目安となる例示にとどまります。実際には、傷病の種類や障害の出ている部位によっても、障害認定基準は細かく分かれています。
障害認定基準の詳細については、以下のページよりご確認ください。
このように障害年金の障害等級は、細かく分けられた認定基準をもとに総合的に判定されます。
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2-4. 障害年金の申請手続きの流れ
障害年金の申請手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。
STEP1.年金事務所で初回年金相談を受ける
STEP2.医師に診断書の作成を依頼する
STEP3.病歴・就労状況等証明書を作成する
障害年金の手続きにおける進め方について具体的に知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
障害年金申請手続きの6つのステップを解説!請求の流れをつかめる
3. 障害者手帳とは?

障害年金について理解が深まったところで、障害者手帳についても知っていきましょう。
障害者手帳は、傷病によって障害が残ったときに、一定の基準を満たしていれば地方自治体より交付されます。
障害者手帳が交付されれば、多様なサービスを利用できます。例えば医療費や補装具に対し助成が受けられたり、公共交通機関利用料金や携帯電話料金、動物園の入場料の割引が受けられたりします。
ここで気になるのは、「障害者手帳を利用するために満たすべき要件は何か?」についてですよね?
障害年金と異なり、障害者手帳の場合は年金制度への加入状況や保険料の納付状況は問われません。障害の種類と重さで交付の可否が判定されます。
3-1. 障害者手帳には3つの種類がある
一口に障害者手帳といっても以下のように3種類あり、それぞれ対象となる障害も異なります。
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳
それぞれの内容について、詳しく解説します。
3-1-1. 身体障害者手帳
身体障害者手帳は、身体の機能に一定以上の障害があると認められる場合に交付される手帳です。
障害年金同様、障害があれば誰でももらえるわけではありません。身体障害者障害等級表に定められた障害の種類と程度に当てはまり、なおかつ障害が一定期間以上継続される見込みがある場合に交付されます。
身体障害者手帳の等級は1〜7級まであり、等級によって受けられるサービスは自治体ごとに異なります。原則6級までしか身体障害者手帳の交付はありません。しかし、7級に値する障害を複数持つ場合には、交付が受けられるケースもあるようです。
身体障害者手帳には更新制度は設けられていません。しかし、障害状態の軽減が予想される場合には、手帳の交付後に再認定が実施されるケースもあります。
3-1-2. 精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、精神障害により長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方の自立支援を目的として作られた制度です。
長期にわたり生活に制約を受ける状態であることが要件とされているため、原則初診日から6ヶ月経過した後でないと、申請が行えません。
精神障害者保健福祉手帳の申請にあたって、原則精神保健指定医(又は精神障害の診断又は治療に従事する医師)が作成した診断書を添付する必要があります。医師の書いた診断書なら何でも認められるわけではありません。
ただしてんかんや発達障害、高次脳機能障害などを患っている方で、精神科以外の科で診療を受けている場合もあるでしょう。このケースでは障害における専門の医師が記載した診断書ならば、申請書類として認められます。
精神障害者保健福祉手帳の対象となる主な精神障害には以下のものがあります。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病
- てんかん
- 薬物やアルコールによる急性中毒や依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害
ただし上記の障害に該当するならば、誰でも利用できるわけではありません。
精神障害者保健福祉手帳の障害等級判定基準に基づき、各等級に該当する障害の程度にあてはまる場合のみ利用できます。以下は厚生労働省によって明示されている、障害等級の判定基準です。
障害の認定 | 障害の状態 |
1級 | 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 精神障害であって、日常生活が著しく制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
このように障害の重さと日常生活への影響具合が総合的に考慮されたうえで、等級判定されるのです。障害の重さや生活の影響具合がどの程度ならば障害等級に該当するかの具体的な内容については、以下のページで確認できます。
厚生労働省|精神障害者保健福祉手帳の障害等級判定基準
精神障害者保健福祉手帳の認定基準と、精神の障害における障害年金の認定基準は似ているといわれています。たとえば2級の障害者手帳をお持ちの方ならば、2級の障害年金を受給できる可能性が高いわけです。
障害者手帳に比べて、障害年金の方が受給要件が複雑かつハードルも高いため、確実に精神障害者保健福祉手帳の等級と同じ等級で、障害年金を受給できるわけではありません。しかし、ご自身が障害年金において、何級に認定されるかの目安にはなるでしょう。
一方、既に障害年金2級を受給しているなら、障害者保健福祉手帳を申請する場合には審査不要で精神障害者保健福祉手帳2級の交付を受けられます。
3-1-3. 療育手帳
療育手帳は知的障害のある方を対象とした制度です。他の手帳同様に交付が受けられれば、さまざまなサービスを利用できます。
療育手帳の認定は、IQと日常生活動作(身辺整理やコミュニケーションなど)を総合的に加味したうえでなされます。IQが70以下であれば、療育手帳の認定を受けられるといわれていますが、詳細な認定基準については自治体によって異なります。
知的障害のある方は、精神障害者保健福祉手帳ではなく療育手帳の対象です。
ただし知的障害の他に精神障害も発症している場合には、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳、両方の交付が受けられます。手帳によって受けられるサービスも異なるため、両方の交付を受ければ、幅広いサポートを受けられる可能性があるのです。
療育手帳は名称や判定基準、受けられるサービス内容など、お住まいの自治体によって異なります。お住まいの自治体に即した詳細な内容を知る場合には、市町村役場の障害福祉窓口へと直接問い合わせてみましょう。
4. 障害者手帳の申請方法
障害者手帳の申請は、お住まいの市町村役場の障害福祉窓口へ、申請書類一式を提出して行います。
窓口申請の際に必要となる主なものを列挙します。
- 交付申請書(市町村役場の窓口にて入手可能)
- 診断書・意見書(同上)
- 印鑑
- マイナンバーのわかるもの
- 申請する本人の顔写真
- 母子手帳(養育手帳の場合)
申請に必要な書類は、申請する障害者手帳の種類や自治体によっても異なるため、事前に市町村役場の窓口に確認してから揃えるようにしましょう。
5. まとめ
この記事では、障害年金と障害者手帳の違いについて解説しました。
障害年金と障害者手帳は、運用機関も根拠となる法律も異なる、全く別の制度です。
日本年金機構の運用する障害年金の場合、受給要件を満たせば公的な年金を受け取れます。一方、地方公共団体の管轄する障害者手帳の交付が受けられれば、公共交通機関の割引や、医療費の助成などさまざまなサービスを受けられます。
障害年金と障害者手帳。いずれの要件も満たすのであれば両方利用できるためより生活の安心感が高まるでしょう。
しかし、保険料納付要件や初診日要件など、満たすべき要件が多く存在する障害年金は、障害者手帳に比べて認定までのハードルが高いのも事実です。
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