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喘息で障害年金を受けるための受給要件とは?申請の際の注意点も併せて解説

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喘息は日本国内で90万人以上が罹患する身近な病気の一つですが、障害年金の受給対象になる可能性がある点については、あまり知られていないかもしれません。

 

もちろん喘息と診断されれば必ず障害年金を受給できるわけではなく、障害年金を受給するための受給要件を満たす場合のみ、障害年金が支給されます。

 

そこでこの記事では、喘息で障害年金を受給する際に満たす必要のある受給要件の詳細や、申請の際の注意点について紹介します。

 

喘息の症状に悩み、今後障害年金の受給を視野に入れたいと思う方は、本記事の内容をご参考ください。




1.障害年金とは?


障害年金

障害年金は原則、公的年金に加入している人が病気やケガを原因として、障害により生活に不便が出たり、仕事に制限を受けたりするときに支給される可能性のある年金です。喘息を発症した場合にも、基準を満たせば障害年金を受給できる可能性があります。



1-1.障害年金の種類

障害年金には障害基礎年金障害厚生年金の2種類があり、初診日に加入している公的年金の種類よって支給される年金が異なります。

障害基礎年金は、初診日に原則国民年金に加入している方がもらえる障害年金です。

自営業者やフリーランス、無職の方などが支給対象者になります。また第3号被保険者である専業主婦や、20歳前に傷病を負った方も障害基礎年金の支給対象者です。

一方、障害厚生年金初診日厚生年金に加入している方を、支給対象とした年金です。障害厚生年金は障害基礎年金に比べて支給対象となる障害の範囲が広く、比較的軽度の障害であっても支給される可能性があります。

 

なお、障害年金の受給額や請求方法の種類など詳細な情報を知りたい場合には、以下の記事をご覧ください。

「障害年金とは?受給要件や金額、申請方法の種類について徹底解説」の記事はこちら



2.障害年金における3つの受給要件

受給要件障害の種類を問わず、障害年金を受給するために満たす必要がある条件を指します。障害年金の受給要件は以下の3種類です。


これらの受給要件について詳しい内容を解説します。

2-1.初診日要件

初診日とは障害の原因になった傷病で、初めて医師等の診察を受けた日のことです。

障害年金を受け取るためには「初診日に原則公的年金に加入している」必要があります。もし公的年金に加入していなかった場合、障害年金を受給できません。

ただし20歳未満の方と60歳以上65歳未満で日本国内に在住されている方は、そもそも公的年金の加入義務がありません。初診日に公的年金制度に加入していなくとも、障害年金を支給される場合があります。


2-2.保険料納付要件

保険料納付要件は、障害年金を受給するための保険料納付状況の基準です。具体的な内容を以下に示します。

  • 初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの期間において、3分の2以上保険料を納付または免除されていること。
  • 初診日が令和8年4月1日前にある場合については、初診日において65歳未満であり、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの一年間に保険料の未納がないこと。


上記のうち、いずれかを満たす必要があります。原則として障害年金を受給するためには、初診日の前日時点で保険料納付要件の基準以上に、年金保険料を納めていることが必須です。

 

2-3.障害状態該当要件

障害年金を受給するためには、障害認定日の障害の状態が障害状態該当要件を満たす程度である必要があります。障害認定日とは初診日から1年6ヶ月経過した日です。

 

障害認定日の障害の状態が障害等級に該当するかどうかが、障害年金の受給可否における決め手となります。

 

障害等級は1〜3級まで存在しており、1級が障害の重い状態、3級が軽度の状態をそれぞれ示します。

 

また障害等級3級に該当しないほど軽度の障害でも、障害手当金の支給対象となるケースがあります。障害手当金は年金ではありません。一時金としてまとまった金額が支給される制度です。

 

注意点として障害基礎年金の受給対象者は障害等級2級以上でなければ障害年金を受給できません。障害等級3級や障害手当金に該当する場合は、障害厚生年金の受給対象者のみ支給されます。

 

このように初診日から原則1年6ヶ月にわたり喘息の症状が続いていて、なおかつ障害認定日に障害等級に該当する程度の障害の状態にあることが、障害年金を受給するための条件です。



3.喘息は呼吸器疾患による障害認定基準に基づいて認定される


呼吸器疾患

障害認定基準とは、障害がどのような状態にあれば、障害等級何級に該当するかが定められた指針です。障害認定基準と、請求者から提出される申請書類を照らし合わせて、日本年金機構の認定医が障害等級を判定します。

 

障害認定基準は障害の種類ごとに設けられています。

 

例えば眼の障害であれば「眼の障害認定基準」、精神疾患による障害であれば「精神の障害認定基準」といった具合です。喘息の場合は、呼吸器疾患による障害認定基準によって判定がなされます。

 

呼吸器疾患による障害認定基準によれば、少なくとも1年以上にわたる長期の療養が必要な場合に障害等級に該当する可能性があります。


令別表 障害等級 障害の状態
国年令別表 1級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
厚年令別表第1 3級 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの


あくまで上記の表に記載のある例示は、障害等級判定の大まかな考え方である点を押さえておきましょう。実際には、呼吸器疾患による障害の程度は以下の要素が考慮され、総合的に等級判定されることになります。

 

  • 自覚症状
  • 他覚所見
  • 検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)
  • 一般状態
  • 治療及び病状の経過
  • 年齢
  • 合併症の有無及び程度

3-1.呼吸器疾患による障害認定要領

障害認定基準で呼吸器疾患は肺結核、じん肺及び呼吸不全の3つに区分されます。このうち、慢性気管支喘息は呼吸不全に区分され、独自に障害認定基準が設けられているためこの章で紹介します。


3-1-1.一般状態区分表

一般状態区分表とは、喘息や呼吸不全によって日常生活や労働においてどの程度の支障が現れているかを5段階で評価するための指標です。

 

一般状態区分表は以下のとおりです。


区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

以下のように障害年金の申請書類の一つである「診断書」にも、一般状態区分表が設けられており、担当のお医者さんが評価して記載することになります。


一般状態区分表

3-1-2.慢性気管支喘息の障害認定基準

慢性気管支喘息は症状が安定している時期において以下の要素が把握されたうえで、総合的に障害等級の認定がされます。


  • 症状の程度
  • 薬剤
  • 酸素療法の有無
  • 検査所見
  • 日常生活状況等

慢性気管支喘息の障害認定基準を確認すると、喘息の症状がどの程度であれば障害年金に該当し得るのかをつかめます。


障害等級 障害の状態
1級 最大限の薬物治療を行なっても発作強度が大発作となり、無症状の期間がなく一般状態区分表のオに該当する場合であって、予測肺活量1秒率が高度異常(測定不能を含む)、かつ、動脈血ガス分析値が高度異常で常に在宅酸素療法を必要とするもの
2級 呼吸困難を常に認める。常時とは限らないが、酸素療法を必要とし、一般状態区分表のエまたはウに該当する場合であって、プレドニゾロンに換算して1日10mg相当以上の連用、又は5mg相当以上の連用と吸入ステロイド高用量の連用を必要とするもの
3級 喘鳴や呼吸困難を週1回以上認める。非継続的なステロイド薬の使用を必要とする場合があり、一般状態区分表のウまたはイに該当する場合であって、吸入ステロイド中用量以上及び長期管理薬を追加薬として2剤以上の連用を必要とし、かつ、短時間作用性吸入β2刺激薬の頓用を少なくとも週に1回以上必要とするもの

引用:日本年金機構「第10節/呼吸器疾患による障害 」

 

(注1) 上記表中の症状は、的確な喘息治療を行い、なおも、その症状を示すものであること。また全国的に見て、喘息の治療が必ずしも専門医(呼吸器内科等)が行っているとは限らず、また、必ずしも「喘息予防・管理ガイドライン 2009(JGL2009)」に基づく治療を受けているとは限らないことに留意が必要。

(注2) 喘息は疾患の性質上、肺機能や血液ガスだけで重症度を弁別することには無理がある。このため、臨床症状、治療内容を含めて総合的に判定する必要がある。

(注3) 「喘息+肺気腫(COPD)」あるいは、「喘息+肺線維症」については、呼吸不全の基準で認定する。

引用:日本年金機構「第10節/呼吸器疾患による障害 」

 

上記が慢性気管支喘息の障害認定基準です。

 

ただ肺活量や動脈血ガス分析値など検査所見については、お医者さんに確認を取らないとわからないところだと思います。そのため障害認定基準の内容を押さえたうえで、障害等級に該当しうる程度にあるかを、お医者さんへ相談してみるとよいでしょう。


3-1-3.呼吸不全の障害認定基準

呼吸不全とは、身体にとって危険を伴うほど、血中酸素のレベルが低くなったり、血中二酸化炭素濃度が高くなったりしている状態です。

 

喘息の障害認定基準に該当しなくとも、呼吸不全の障害認定基準には該当するケースもあるため、呼吸不全の障害認定基準についても紹介します。

 

呼吸不全は動脈血ガス分析値と予測肺活量1秒率という2種類の検査数値で、等級判定が行われます。


A表 動脈血ガス分析値

区分 検査項目 単位 軽度異常 中等度異常 高度異常
1 動脈血O2分圧 Torr 70~61 60~56 55以下
2 動脈血CO2分圧 Torr 46~50 51~59 60以上

B表 予測肺活量1秒率

検査項目 単位 軽度異常 中等度異常 高度異常
予測肺活量1秒率 % 40~31 30~21 20以下

上記を踏まえると、呼吸不全の障害等級の目安は以下のとおりになります。

障害等級 障害の状態
1級

A表及びB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、

一般状態区分表のオに該当するもの
2級

A表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、

一般状態区分表のエ又はウに該当するもの
3級

A表及びB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、

一般状態区分表のウ又はイに該当するもの


呼吸不全の障害の程度の判定において優先されるのは、A表の動脈血ガス分析値です。

 

そのうえでB表予測肺活量1秒率 をはじめとした、その他の検査成績や障害認定時の日常生活状況などを把握したうえで、総合的に障害等級が認定されることになります。



4.喘息で障害年金を請求する際の注意点


喘息で障害年金を請求する際に注意すべき点を解説します。

 

4-1.お医者さんと綿密にコミュニケーションを取る

適切な内容の診断書を作成してもらうために、お医者さんとの綿密なコミュニケーションが欠かせません。

 

請求書類の中で最も重要な位置付けにある診断書には、お医者さんの客観的な目線で一般状態区分表の評価や発作の強度について評価してもらう必要があります。しかし、診察時間だけでお医者さんがその全てを把握することはなかなか難しいものです。

 

そのためお医者さんと積極的にコミュニケーションを取り、実態を共有する必要があるわけです。場合によっては、要点をメモにして渡すなどの工夫も必要かもしれません。


4-2.診断書のポイントをつかむ

お医者さんと、効果的にコミュニケーションを取るためには、診断書の内容を事前に把握しておき、喘息に関わるどんな情報を提供すればよいか押さえておくべきです。

 

これによりお医者さんは診断書を作成する際に、実態と整合性の取れた評価ができるようになるのです。

 

喘息で障害年金を申請する際に押さえておくべき診断書のポイントをいくつか紹介します。


4-2-1.診断書の表面で把握しておくべきポイント

診断書の表面には、喘息のみならず共通して記載すべき欄がまとめられています。診断書の表面で、特に内容を把握しておくべきポイントは以下の3点です。


  1. 一般情報区分表
  2. 臨床初見:自覚症状
  3. 活動能力(呼吸不全)の程度

一般状態区分表

①一般状態区分表

一般状態区分表の評価内容を確認し、自分が該当すると思われる項目や理由を伝えられるようにしておきましょう。


区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

②臨床初見:自覚症状

自覚症状に関しては、以下のように、さまざまな項目が(無・有・著)3段階で評価される欄が設けられています。

  • 胸痛
  • 呼吸困難(安静時)
  • 呼吸困難(体動時)
  • 喘鳴

 

これらの症状について適切な記載が受けられるように、自己評価を事前に伝えておくべきです。

 

 

③活動能力(呼吸不全)の程度

活動能力(呼吸不全)の程度については該当する状態を把握しておき、お医者さんに伝えられるようにしておきましょう。


区分 活動能力(呼吸器不全)の程度
同年齢の健康人と同様に歩行、階段の昇降ができる。
階段を人並みの速さでのぼれないが、ゆっくりなら登れる。
階段をゆっくりでものぼれないが、途中休み休みなら登れる。
人並みの速さで歩くと息苦しくなるが、ゆっくりなら歩ける。
ゆっくりでも少し歩くと息切れがする。
息苦しくて身のまわりのこともできない。

 

4-2-2.診断書の裏面の注意点

診断書の裏面には、疾病別の記載欄が設けられています。このうち気管支喘息の欄の中で押さえておくべき点は以下の3点です。

  1. 発作の強度
  2. 発作の頻度
  3. 喫煙歴

診断書の裏面の注意点

①発作の強度

発作の強度の欄を確認し、自分がどの状態に該当するかを伝える必要があります。


区分 発作の強度
大発作 苦しくて動けなく、会話も困難
中発作 苦しくて横になれなく、会話も苦しい
小発作 苦しいが横になれる、会話はほぼ普通
その他 喘鳴のみ
急ぐと苦しい
急いでも苦しくない

②発作の頻度

発作の頻度の欄を確認し、自分がどの状態に該当するかを伝える必要があります。


区分 発作の頻度
(1) 1週に5日以上
(2) 1週に3〜4日
(3) 1週に1〜2日
(4) その他

③喫煙歴

喫煙習慣の有無について記載する欄があるため、お医者さんに伝えておくべき内容です。


喫煙歴

このように診断書の内容を押さえお医者さんへと情報提供していくことで、適正な内容の診断書を受け取れるようになります。


4-3.診断書の内容は必ずチェックする

お医者さんに作成してもらった診断書の内容は、必ずご自身またはご家族が確認しましょう

 

先に述べたとおりお医者さんは必ずしも実態の全てを把握して、診断書を作成しているわけではありません。たとえ事前にお医者さんとコミニュケーションを取れていたなと思っていても、診断書の内容は念の為確認しておきましょう。

 

本来書かれていなければならない欄に記載がなかったり、実態より軽く評価されていたりする場合があります。

 

もし実態より軽く評価されていると、受給できる年金が少なくなってしまったり、不支給になってしまったりする場合があります。そのため診断書の内容は、必ずチェックしておきましょう。



5.障害年金の申請手続きの流れ

障害年金の申請手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。


STEP1.年金事務所で初回年金相談を受ける

STEP2.医師に診断書の作成を依頼する

STEP3.病歴・就労状況等証明書を作成する


障害年金の手続きにおける詳しい進め方について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

「障害年金申請手続きの6つのステップを解説!請求の流れをつかめる」の記事はこちら



6.まとめ


この記事では、喘息で障害年金を受給する際の受給要件や、申請を行う場合の注意点について解説しました。

 

喘息は身近な病気の一つですが、症状が長期にわたるものであったり日常生活に受ける影響が大きかったりする場合には、障害年金の対象になる可能性があります。

 

ただし、喘息と診断されれば誰でも障害年金の対象になるわけではなく、3つある受給要件を満たす必要があります。

  • 初診日要件
  • 保険料納付要件
  • 障害状態該当要件

このうち、障害状態該当要件については、初診日から原則1年6ヶ月後の障害認定日時点での障害の状態をもとに、受給の可否が判定されることになります。

 

喘息は、主に検査数値をもとに障害等級が判定されますが、自覚症状や日常生活の状況なども考慮されるため、お医者さんに書いてもらう診断書には現状を正確に表現してもらう必要があるのです。そのため、事前にお医者さんとは綿密にコミュニケーションをとり、診断書作成に必要な情報を提供する努力が求められます。

 

しかし、喘息の症状により体調がすぐれない中、適切に障害年金の請求準備を行うことはなかなか難しい場合があるかもしれませんこうした場合に、年金制度の専門家である社会保険労務士に相談することにより、適切なアドバイスやサポートを受けられます。

当センターでは、初回無料障害年金にまつわるご相談を承っております。

 

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